36話:叫び慌しかった格納庫に静けさが訪れた。外は夜の闇が広がり、クレタ島にレイザーは身を隠していた。貴子は翔が眠るベッドのそばで毛布に包まって眠り、レッシュも優美のそばで椅子に腰掛けたまま眠っていた。他のクルーたちも静かに眠っている。ミコが欠伸をしながら、レイザーのブリッジで真っ暗な海を睨んでいた。ちょうど、シェリーが見張りの交代にブリッジに入ってきた時だった。修繕され、色も塗りなおされたた白いウィング・グロリアスの横に立つレッド・バードのコクピットのモニターが静かに点った。「・・・来る・・・誰なの?」 EVEが何かを感じ取った。それが何なのかは分からないが、何かを“感じる”。その何かは“同じ”感じがする。 「・・・知ってる・・・私は・・・」 何かが外れたような気がした。AIであるEVEがそんな感覚を持つはずはないのだが、そう“感じる”。それっきり、モニターが消えた。再び、格納庫に静寂が訪れた。“彼女”の中で何かが開くようだった。 「姿が無い?・・・どこかにいるはずだ。捜索を続けてくれ」 「了解」 ブリッツェンは慣れない戦艦の感覚に戸惑うクルーたちに檄を飛ばしていた。目の前には夜の地中海が広がる。夜の航行も可能なのだが、危険が多い。着水しレーダーを目一杯広げてレイザーの捜索にあたっていた。ギア・ロッドよりは新型になるジア・エータは航行速度や操作性はギア・ロッドより上だが、如何せん火力がギア・ロッドと比べると劣る。だが、他の一般的な艦よりはいいため、今までギア・ロッドの火力が相当凄かったことの証明になってしまった形になる。 「先ほど反応したものは大気圏内に入った後消滅したようです」 「そうか。ならば問題は無いな」 先ほど、イオニア海付近に何かが落ちていった、が、それは燃え尽きたのかロストしてしまっていた。何かが大気圏より上から投下されたのだろうか。今となってはもうわからない。 「輸送艦と言えども大型であることに間違い無い。・・・この付近の島は?」 「クレタ島です」 「よし、その島に少しずつ近づいてくれ」 ブリッツェンは操舵手に指示を出した。ゆっくりと水面を撫でるようにジア・エータが進んで行く。その時だった。レーダーに何かが反応し、オペレーターが叫んだ。 「大型の機影を確認・・・熱紋照合・・・“レイシリーズ”の何かです!」 「“深紅の鷹”のレイザーで間違い無いだろうな」 ブリッツェンは休んでいるであろう翼に艦内の内線を使って、連絡を取った。 「鷹山君」 「・・・うぁ・・・何だこんな時間に?」 「“深紅の鷹”の艦を発見した」 「・・・何!?」 その言葉に翼の眠気が一気に吹き飛んだ。内線電話に食って掛かる勢いで翼は言う。 「今すぐ出るぞ!」 「待て」 「何でだよ!?」 はやる翼をブリッツェンが諫めた。ブリッツェンは静かに告げる。 「夜明けと共に攻撃を仕掛ける。鷹山君はそのために準備してくれ」 「・・・わかった。あと・・・2時間だな」 翼は現地時間の時計に目をやった。夜明けまで約2時間。翼は内線電話を置いて、ベッドから起き上がった。そして、パイロットルームへと向かっていく。 「出せるのはブラック・バードとフロウ3機だけだ。恐らく相手は“深紅の鷹”1機だろう。鷹山君以外はレイザーを狙ってくれ」 「俺たちも援護します!」 待機していたフロウのパイロットの青年から通信が開いた。だが、ブリッツェンはその提案を拒否する。 「君たちには無理だ。“深紅の鷹”は恐らく鷹山君と同等か・・・強い」 「え!?」 「君たちはその母艦であるレイザーを叩いてもらうという重大な任務がある。レイザーも一筋縄じゃいかない相手だ。気を抜くんじゃないぞ」 「了解!」 “漆黒の鷹”より強いかもしれないと言うことは彼らが援護に出た場合、“深紅の鷹”から彼らを守りながら翼は戦わなくてはならないことになる。自分たちを援護して、“漆黒の鷹”やられるのは避けたい。フロウのパイロットたちはその命令に素直に従った。 「さぁ・・・どう出る・・・?レッシュ君とやら」 ブリッツェンは顎をさすりながら、レーダーに捉えられたレイザーの姿を見ていた。 「ん・・・?レッシュ・・・?」 優美が目を覚ますと深めの椅子に腰掛けたまま眠っているレッシュがそこに居た。優美がそっとベッドから起き上がりレッシュに触れようとした瞬間だった。けたたましいサイレンが艦内に鳴り響いた。 「きゃっ!」 「!?・・・優美?」 目を覚ましたレッシュは驚いてバランスを崩した優美を受け止めた。大丈夫か?と聞いて、彼女を支えたまま立ち上がった。 「ありがと」 「隊長!敵襲です!・・・早く出撃準備をしてください!」 ミコの声が響き渡る。その声を聞いてレッシュは優美をベッドまで連れて行くと、その部屋を出て行こうとした。優美が後姿のレッシュを呼び止めた。 「レッシュ!」 「・・・心配するな」 「絶対・・・帰ってきて」 優美はシーツを掴んでかみ締めるように言った。レッシュが優美のほうに向き直って笑顔で言う。 「ああ、約束する」 そう言ってレッシュは扉を開いて走って行った。優美はしばらくそのままぼーっとしていたが、意を決したように同じように、少し足を引きずりながら扉を開いて出て行った。 「フロウ部隊出撃完了!・・・続いてブラック・バード出撃セット!」 ブラック・バードがカタパルトに運ばれセットされる。翼はゆっくりと目を開いた。モニターが点り、駆動音が聞こえる。コンディションは良好。機体も完璧だ。そして、ブラック・バードの目が点る。 「鷹山だ。ブラック・バード出るぞ!!」 カタパルトが加速し、一気にブラック・バードが人型形態で飛び立つ。すぐさま戦闘機に変形し、水面を飛ぶフロウたちに追いついた。 「・・・レッシュ」 翼はコクピットの中で小さく押しつぶす声で嘗ての友であり、今は仇の名前を呼んだ。 「レッド・バードセットアップ開始。システム・・・」 「EVE」 EVEのいつもの“台詞”をレッシュが遮った。EVEは“台詞”を止め、レッシュに問う。 「何でしょうか?」 「お前・・・エデン・チルドレンなのか?」 「え・・・?」 突然のことにEVEがいつものようなおかしな反応をする。レッシュはあの映像を見せられてからずっと考えていた。EVEがエデン・チルドレンなのかということを。 「私は・・・」 EVEは戸惑った。どう答えていいのか分からない。 「その反応、前からおかしいと思ってたんだよ。・・・お前は誰なんだ?」 「私は・・・EVEです」 「まあ、この話は帰ってからゆっくりと話そう」 レッシュは自らセットアップをして、レッド・バードの歩みを格納庫の扉まで進めた。扉が開き、地中海が広がる。 「EVE、サポート頼むぞ」 「・・・了解です」 レッド・バードが床を蹴って飛び上がった。人型形態から戦闘機に変形し、空に舞い上がった。ミコの機体がそれに続いて、飛び上がってレイザーの上に降り立った。 「出たな・・・レッシュ」 「・・・タカ」 最初に仕掛けたのはレッシュだった。“シルバー・アロー”をブラック・バードに放った。それを回避して、ブラック・バードもリニアライフルを放つ。 「レッシュ!お前は!!」 「タカ!!」 フロウたちはレッド・バードにも目もくれずに一直線にレイザーに向かっていく。それを見てレッシュはこの攻撃の真意を知った。 「・・・タカ!お前が囮か!?」 「艦を叩けばお前の帰る場所は無くなる!・・・んで、ここでお前は俺に倒されるんだよ!!」 同時にレッド・バードとブラック・バードは人型へと変形し、ブラック・バードはリニアライフルを、レッド・バードは“シルバー・アロー”を放った。リニアライフルの弾を打ち落とし、ブラック・バードに光の弾丸が迫る。 「ちっ!・・・これでっ!!」 ブラック・バードはリニアライフルを連射するがレッド・バードには掠りもしない。逆に、レッド・バードの“シルバー・アロー”がブラック・バードを追い詰めた。 「タカ!・・・俺はここでやられるわけにはいかない!」 「待て!!」 “シルバー・アロー”が左肩を霞め、ブラック・バードのコクピットに警告信号が点る。バランスを崩した瞬間、レッド・バードはブラック・バードに背を向け、レイザーの救出に向かう。 「そうはさせねぇ!!」 「くっ!!」 戦闘機に変形したブラック・バードのエネルギー砲とミサイルがレッド・バードを捉えた。追い討ちを掛けるようにジア・エータからミサイルとエネルギー砲が放たれた。 「“深紅の鷹”に照準・・・撃てぇぇ!!」 「くっ!・・・でも!!」 それらを回転しながら回避してミサイルは“シルバー・アロー”で撃ち落とす。 「・・・ミコ・・・頼んだぞ」 レッシュは目の前の黒い機体を睨みつけた。 「フロウ3機接近!迎撃システム起動!」 「へっ・・・喰らえ!」 1機のフロウが抱えていたコンテナからミサイルが放たれた。それは空へと撃ちあがり、レイザー目掛けて降下してきた。レイザーのミサイル迎撃システムが起動し、そのミサイルを撃ち落とそうとした。 「迎撃!!」 そのミサイルは無数に割れ、レイザーに降り注いだ。ミサイルなどの迎撃システムが破壊される。凄まじい衝撃が貴子や友子、シェリーを襲う。 「きゃあ!!」 「・・・迎撃システム60%損壊!危険です」 友子の目の前のモニターにはレイザーの各所が赤く点って表示されている。装甲も相当なダメージを受け、各所で炎が上がっている。艦上のミコも例外では無かった。 「ミコさん!!」 「・・・平気よ・・・機体はもう無理ね。何とか・・・戻るわ」 半分見えないモニターを見て、重い機体をミコは持ち上げた。2機のフロウがボロボロの赤いグロリアス・スーパーをロックした。 「ああっ!」 「ミコ!!」 クルスがミコへの通信で思いっきり叫ぶ。回避できない。そう考えた瞬間、放たれたライフルを真っ白なシールドが遮る。攻撃に転じた白いGから放たれた2つの光が1機のフロウを捉えた。頭部と脚部を破壊されバランスを崩して海面に落ちた。 「ミコさん!」 「・・・優美ちゃん!」 通信から聞こえてきた声にミコは驚いた。ウィング・グロリアスのコクピットにはベッド着姿そのままで優美が乗っていた。 「早く戻ってください!」 「・・・ええ」 ミコのグロリアス・スーパーが崩れるように格納庫へと入っていった。それを合図に格納庫の扉が閉じた。優美は残った2機のフロウを見た。フロウのパイロットも白いウィング・グロリアスを見た。 「アイツは・・・リー隊長を殺した!!」 「丁度いい。敵討ちだ」 2機のフロウはレイザーを両サイドから攻撃する。迎撃システムが破壊されている上に、優美1人じゃ同時には守れない。機体から飛び降りてきたミコは真琴に問いただした。 「どうして優美ちゃんが!?」 「・・・いきなり来て出て居ちゃったの・・・止められなかった」 「あの子、怪我してるのよ!?」 ミコは半泣きになって真琴に詰め寄る。この際どうとも言っていられない。例え怪我人でも戦える人間は戦ってもらわなければ、レイザーが沈む。ミコは格納庫から優美に通信を開いた。 「優美ちゃん!」 「・・・はい」 優美は怒られると思い、身を小さくした。 「絶対に・・・無茶しないで!お願い!!」 「はい!」 予想外の、いやある程度は予想していたミコの言葉に優美は力強く答えた。ミコは通信機を置くと、その場に倒れこんだ。真琴がそれを支える。ミコは震えていた。 「ミコ・・・」 「・・・お願い神様。優美ちゃんを守ってあげて」 その小さな願いはクルーみんなに広がっていった。 「レッシュ!!」 「タカ!!」 2機の戦闘機が空中戦を繰り広げる。ブラック・バードに当たらない様にジア・エータからの射撃が続いている。スピードではブラック・バードが上だ。レッド・バードの後ろを取る。だが、羽根を羽ばたかせ、急激に高度を落とし、切り替えして今度はレッド・バードが後ろを取った。すぐさま“シルバー・アロー”が連射される。 「くっ!・・・コイツ!!」 「お前が俺を殺すなら・・・俺はお前を倒すしかなくなる!!」 レッシュが叫ぶと同時にレッド・バードがブラック・バードを抜き去ろうとした。レッド・バードは背中にブレードを搭載している。その上戦闘機形態のまま、ブレードを使用することが可能だ。羽根の上部に付いたブレードが展開し、ブラック・バードを掠めた。 「な!?・・・その状態で使えるのか!?」 翼は一旦高度を下げ、レッド・バードの下を取った。海面スレスレまで高度を落とし、人型形態に変形させる。上空を見上げ、リニアライフルを構えた。レッド・バードをロックする。 「終わりだ!!」 ブラック・バードはレッド・バードに向け、リニアライフルを放った。 「はぁ・・・うっ・・・」 優美は頭の包帯を押さえる。まだ頭の傷が疼く。でも、その理由だけで逃げるわけにはいかない。レッシュだって嘗ての友と戦っているのだから。 「コイツ、速い!!」 「待て!」 「先にコイツを倒さなければ、レイザーも落とせん!・・・やるぞ!」 レイザーを守るように防戦一方のウィング・グロリアスに2機のフロウが襲い掛かる。ブレードを抜いて、同時に斬りかかって来た。一方をブレードで受け止め、もう一方をシールドで受け止める。2機の推進力に一気に押し返され、吹き飛ばされた。 「きゃああああ!!」 「優美ちゃん!!」 ミコがブリッジで、涙声で叫ぶ。ウィング・グロリアスは水面に叩きつけられるが、水柱を吹き上げ、体勢を立て直した。優美の荒い息遣いがミコの耳にも届いた。 「優美ちゃん・・・」 「・・・やるな!だが、まだまだだ!!」 「畳み掛けるぞ!」 今度は1機のフロウが後方からブレードで斬りかかって来た。それを回避した優美だったが、上空からもう1機が迫る。再びシールドでガードするが水面に叩きつけられた。 「あうっ・・・!」 「やっぱり・・・無理よ・・・もうやめて!!」 ミコがそう叫んだ瞬間だった。2機のフロウが一瞬にしてエネルギー弾で破壊された。見上げたその先には青いGが空を飛んでいた。肩が黒く、両手にエネルギーだろうか、ライフルを構えていた。 「え?」 「はぁはぁ・・・何?」 優美のウィング・グロリアスが海から飛び上がった。見上げると青いGがこちらをロックしていた。 「敵!?」 “I”はコクピットで小さく呟いた。レイザーのレーダーにもう1機Gが捉えられ、その姿を見せた。色は同じだが、別の機種だろうか、スパイク付きのシールドと、肩が黒い方が両手に装備しているライフルを右腕に持っている。 「・・・“O”、敵はそいつじゃない。あくまで“F”が優先だ」 「結局消すんだろ?」 「先に“F”だ。行くぞ」 “I”の指示に無言で“O”は従った。2機の青いGは一直線にレッシュの居る方向に向かっていった。それを見て、優美は機体をその方向に向かわせようとした。その瞬間、通信でミコの叫び声が聞こえた。その声は裏返り、震えている。 「やめて!!・・・優美ちゃんは戻って・・・」 「でも・・・レッシュが!!」 「お願いだから・・・もう無茶しないで・・・隊長なら、絶対大丈夫だから・・・」 「・・・はい」 ミコの必死の訴えに優美は素直に従った。今の自分が行ってもきっと足手まといになるだけだ。レッシュを信じるしかない。優美は開いた格納庫の中にウィング・グロリアスを降ろした。 その時、ジア・エータでも3機のフロウの信号がロストしたのと同時に未確認の2機のGが現れたことが表示された。 「フロウ隊・・・3機ともロスト・・・撃墜されました・・・これは!!」 「どうした!?」 「アンノウンを確認!機数2!・・・映像出ます!」 コンピュータを操作してメインの大画面モニターにそれが表示された。白いウィング・グロリアスとレイザー、そして、2機の青いGだった。片方の肩が黒い方は両手にライフルを持ち、もう一方の青いGはスパイクシールドと背中に巨大な砲身が見えた。 「何だ・・・?」 ブリッツェンが首を傾げた瞬間、見たこともない形式の2機の青いGは一直線にこちらに向かってくる。 「来るぞ!?」 「・・・違います!あっ、“深紅の鷹”と交戦を開始!」 「何だ?・・・敵か?・・・我々は、引き続きブラック・バードの援護を行う!」 「了解!」 再びジア・エータはレッド・バードをロックし攻撃を再開しようとしていた。 放たれた弾丸はレッド・バードを捉えた。だが、シールドによってそれは阻まれる。逆にレッド・バードから降り注ぐように“シルバー・アロー”が放たれた。 「ぐあぁっ!」 何とか回避したものの、周りに水柱があがり、海水が熱で蒸発し水蒸気が発生し、あたりに立ち込める。熱感知センサーがグルグルと壊れたような値を繰り返して出していた。 「く・・・レッシュ!」 「タカ・・・これで終わりだ!」 レッシュは一気に機体を急降下させた。ブレードを両背中から抜き、両腕を広げた状態で真っ直ぐブラック・バードに向かう。ブラック・バードもブレードを展開させたが間に合わない。レッド・バードのブレードがブラック・バードを捉えようとした瞬間だった。 「レッシュ!右!」 「何!?」 レッド・バードとブラック・バードの間を2つのエネルギー弾が駆け抜けた。レッシュはEVEの声に反応し急制動をかけたため、直撃は避けることが出来た。2機から連続発射されるエネルギー弾を回避しながら、レッド・バードはブラック・バードから距離を取った。 「・・・感じる・・・同じ・・・私と同じ!!」 「あぁ!?なんだお前らは!?」 翼も2機のGの姿を見た。ブラック・バードには目もくれず一直線にレッド・バードを目指して攻撃している。その行動が翼の癪に障った。 「シカトかよ!・・・いい度胸じゃねぇか!?」 翼はペダルを踏み込んで一気に海面から空へとブラック・バードが飛び立っていく。 「EVE・・・同じって・・・?」 「同じ・・・“彼ら”はエデン・チルドレン」 「え!?」 EVEのその言葉と同時に3方向から同時に4つのエネルギー弾がレッド・バードを捉えた。その光景を格納庫から見た優美が思いっきり叫ぶ。 「レッシュ!!!」 ありえないことが起きた。絶対回避不可能な死角からのジア・エータの射撃、両サイドに展開した2方向からの“I”と“O”の攻撃。その中にレッシュは居た。EVEが輝いて、レッシュの“本来の力”が発動する。 「・・・見える!」 全てがスローモーションの世界に変わる。だが、自分は、レッド・バードはいつもの動きが出来た。着弾の順番も分かる。その順番に処理すれば問題はない。レッド・バードはシールドを放り投げ、肩が黒い方の青いGから放たれた2つのエネルギー弾を止めた。次にジア・エータから放たれたエネルギー砲を上半身だけを逸らして回避し、最後に青いGから放たれたエネルギー弾を“シルバー・アロー”を2連射して、相殺させ、さらに打ち勝ったエネルギー弾が青いGを捉えた。すぐさまシールドで青いGはガードしたが、その動きにその現場に居た全員が驚愕する。 「な!?」 「くっ!!相殺された!?」 「・・・すげぇ」 「回避したのか・・・馬鹿な」 目の前でシールドだけが破壊された“O”。攻撃を相殺された上に攻撃を返してきたことに驚く“I”。一瞬だったが、とんでもない速さで動いたレッド・バードを目の当たりにした翼。死角からの攻撃を回避されたジア・エータのクルーたち。驚いたのはレイザーのクルーも同じだった。だが、他と違ったのは驚愕の後歓声が沸き起こる。 「やったぁ!」 「レッシュ・・・」 「凄い・・・これが・・・隊長の力」 クルスが拳を突き上げて喜び、優美がそっと胸を撫で下ろす。ミコも涙で霞んだ目でそれを見た。 「レッシュが狙いか!?・・・そいつは俺が倒すんだよ!横取りすんじゃねぇ!!」 翼がリニアライフルをシールドを持った青いGに向かって放った。青いGは分かっていたかのように、簡単に最小限の動きで回避する。その動きは人間の動きそのものだった。 「・・・何だ?」 「“漆黒の鷹”・・・はっ!ザコか」 ブラック・バードを完全に無視をして2機の青いGはレッド・バードに向かって行く。レッド・バードから放たれる“シルバー・アロー”が2機を掠める。 「くっ!」 「回避が!?」 「お前ら・・・!」 怒りに燃える翼のブラック・バードはブレードを展開し、2機の青い背中に迫っていった。 ジャンル別一覧
人気のクチコミテーマ
|